まずはこちらをご覧ください!(2020/02/10確認)
~お品書き~
江蘇揚子三井造船有限公司とは
この会社は、実は中国にある造船企業なのです。
三井E&S造船株式会社(本社:東京都中央区、社長:古賀哲郎)は、三井物産株式会社(本社:東京都千代田区、社長:安永竜夫、以下「三井物産」)、および揚子江船業集団公司(本社:中国江蘇省、董事長:任元林、シンガポール上場、以下「揚子江船業」)との間で造船事業の合弁会社である江蘇揚子三井造船有限公司(中国江蘇省太倉市、社長:宋書明)を設立し……(以下の三井E&SのHPより引用)。
このように、三井と揚子江の合弁企業がこの企業の正体です。
ちなみに、どうして合弁企業を作るのかというと、現地での株式の半数以上が中国企業になければ開業を許可しないという中国政府の方針があるためです。なので、全額出資の自社工場を中国に作ることはできないのです。川重や今回のも、半数か過半数以下の出資です。
なお、その例外が常石造船の舟山にある工場です。「常石集団(舟山)造船有限公司」という会社で、中国における日本の造船企業では唯一の全額出資会社となります。
何が変わっているの?
では、この造船所いったい何が少し変わっているのでしょう。
それは、建造方式にあります。
そうです!
なんと、新造船を船台やドックではなく、地上で建造しているのです。
というのも、漁船や木造船であればともかく、DWT8万トンクラスの船をこの方式で建造するのは、おそらくここのみではないでしょうか?
よく似たものとしては、シンクロリフト方式があります。
これは、海の下まで続くエレベータで船を載せて地上と海中を移動させる方式で、国内最大級のものは新糸満造船という会社のものです。ただ、それでも規模は画像の通り、小規模です。
建造プロセス
船台やドックとも異なりますが、その建造の進め方はあまり変わりません。
画像のように、船体ブロックを作ったのちに溶接し船舶を建造していくという流れは変わりありません。
最大の特徴は進水時にあります。
地上で建造された船をレールに沿って海へもっていきます。
海面ではフローティングドック(浮きドック)が待機しており、新造船をいったんこちらに移します。
その後、浮きドックが沈んでいき、新造船が完全に進水したのち、浮きドックは離れていくという方針でしょう。
今後
実は、数年後にはドックを建築する予定だそうです。そもそも、ここは海洋構築物の建造拠点だったそうで、新造船を考慮していない工場でした。
生産性はともかく、地上建造の場合はどうしても建造可能な最大船型が限られます。将来的により大きい船を建造するのであれば、ドックの建造は不可避でしょう。
三井側としても、国内工場で高付加価値船を建造し、低付加価値船を人件費等で安い中国で建造するのは理にかなっています。さらに、中国政府は自国への輸送を自国で作った船で行うことを考えており、それに対応するためにはどうしても中国に造船所を作る必要があります。
また、こちらのように、他の国内造船業についても影響が及ぶ可能性もあります。
おわりに
新造船の建造方法。今回のは非常に珍しい方式でした。
少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
このブログでは造船に関する様々な記事を書いております。よろしければほかの記事もご覧ください。
それでは~。
コメント
[…] […]