日本の造船企業を知ろう!

約1,000事業者ある国内の造船業。ここでは、そのうち工業会加盟の17社を軽く紹介します!

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2021年卒必見!造船業界紹介

研究以外の造船記事はこちら

まだかなり早いですが、造船業界に就職したい方へ業界の概観などをご紹介します。

私は大学院修士で戦後日本の造船産業を研究しまして、実際にインタビューなどにもうかがってます。

少なくとも知っておくべきことを中心にお伝えし、皆様の就活に役立てていただければと思います。下記の書籍は読んでおいて間違いありません。

  

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造船業界とは

造船業界といっても、企業者数はかなり多くあります。船舶建造事業社だけでも1,000社を超えますからね。

さらに、船舶は部品数が世界で2番目に多い構造物で、エンジンやプロペラなど舶用機器メーカーも数多存在します(1位は飛行機で約300~400万点、2位の船は20万~30万点、3位の自動車は2万~4万点)。

このように、船舶建造社や舶用機器業者のほか非常に多くの企業がかかわるのが造船業界なのです。特に瀬戸内圏では造船所や舶用機器メーカー、銀行、船主などが密集しており、海事クラスターと呼ばれてます(クラスターは経営用語で「様々な産業が直接・間接に関係する産業群のこと」を意味します)。

そして、このうちの造船建造事業社や修繕事業社を造船業界と一般には言われてます。

公益財団法人日本海事センターsipping nowデータ編 我が国海事クラスターの構成」より

 

実際の数値を交えて見ていきましょう。おそらく2013年頃のデータだと思いますが、とても分かりやすい資料にまとめられてます。

この造船・舶用工業に就職することとなりますが、言い換えると約2.4兆円規模の業界に足を入れることとなります。特に日本は貿易の99%を船に頼るわけですから、皆さんが販売したり設計したり作ったり整備したりする船は、ある意味日本人の生存を維持させる最重要機械にほかなりません。

国土交通省「造船・舶用工業等の現状と施策ー資料2

戦後造船業の略史

第2次大戦で日本の海運が壊滅した一方、制海権を確保できた連合軍は造船所を攻撃対象としませんでした。そのため造船所の被害は少なく、朝鮮戦争でのブームで一気に急成長する事が出来ました。

1956年に世界1位の建造量を誇るイギリスを抜き、2000年まで王者の地位を占めていた日本ですが、現在は建造量第3位となってます。現状の世界市場は中国、韓国が30%を占め、20%を日本が占めております。

さて、戦後日本の造船業を率いたのは三菱や川崎といった大手重工業企業で、現在有名となた今治や常石などの中手造船専業企業はまだまだ弱小造船業でした。事実、オイルショックまでの国内建造量は、その90%近くが大手企業によるものでした。

しかし、現在の業界を見ると三菱などの大手企業の姿は上位にはありません。これはオイルショックとそれに伴う政策によるものです。

実は、それまでの造船業はVLCCなどの超大型船を大手企業が建造し、中小型バルカーを中手企業が建造してました。しかし、オイルショックでVLCC市場が壊滅し、彼らが中手企業の市場に参入、船価暴落と倒産企業の激増が引き起こされました。

過剰設備を処理するため、国策として2度の設備処理が行われました。大手企業ほど設備処理量が多く設定されたため、弱小企業を乱立する結果となり、競争力が失われました。

その後、大手は多角化を進め造船事業の比率を低減、あるいは分社化し、専業である中手企業が日本造園業の主力となりました。

業界用語など

少し驚きましたか?海上封鎖されたら干からびるといわれるほど、日本は船に頼らなければならない国ですので、自国造船業の崩壊は他国に生命を事実上握られることを意味します。

さて、次は業界の主役たちを見ていきましょう。

ただし、まずは業界用語を学ばなければ理解しずらいと思います。少しだけ紹介いたします。

重さについて

人の重さをはかるには体重計に乗ればよいだけですが、船はそうはいきません。

船の重さはトン数で表されますが、トン数にも様々な種類があります。

日本海事広報協会「船のなるほどートン数のいろいろ

 

少し説明すると、総トン数(Gross Ton:GT)は船の“容積”に係数を掛けた数字で、大きいほど“大きな船”となります。載貨重量トン数(Deadweight Ton:DWT)は船が積むことのできる貨物の重量です。なので、総トン数が同じ船でも、積めることができる量が同じだとは限りません。

コンテナ船では2万TEU型などといわれることがあり、これは20フィートのコンテナ(twenty-foot equivalent unit)を最大で2万個載せられることとなります。

排水量は海軍艦艇に利用されることがほとんどで、各国の比較にも用いられます。

もし海軍艦艇と商船が衝突した際のニュースを見た時は、まず同じ単位であるか否かを調べましょう。詳しくない方は、総トン数と排水量を同じだと思い、勝手に比較してしまうことが多々あります。

日本船主協会「海と船のQ&AーQ9:船の大きさ:トン数とは?

船のサイズについて

最大船型によるもの

一般的に、船のサイズは外部要因に決められているといえます。パナマックスサイズなど聞いたことがあると思います。これはパナマ運河を通行できる最大のサイズを意味しており、これ以上のサイズは通る事が出来ません。

パナマ拡張で今はより大型の船舶が通行可能となりましたね。

パナマックスのほかスエズマックスなどもあります。

商船三井「暮らしを支えるいろいろな船

積載数量によるもの

VLCC(Very Large Crude Oil Carrier)と呼ばれる超大型タンカーは、原油を20万トン以上積載できる船を意味してます。30万トン以上はULCCと呼ばれますが、大きすぎて港湾設備が限られますので、現在は大きくてもVLCCサイズまでとなります。

VLCCのほかVLOC(超大型鉱石運搬船)などもあります。

 

商船三井「暮らしを支えるいろいろな船

運貨指標によるもの

アフラマックスタンカーと呼ばれるものがあります。だいたい8~12万トンの石油タンカーで、Average Freight Rate Assessment (AFRA) という運賃指標に由来してます。

船の種類について

皆さんもタンカーやコンテナ船、バルクキャリア、客船などある程度の船種をご存じだと思います。

改めて、少しまとめてみましょう。

バルカー

一般にバルカーと呼ばれる船は、梱包なしに鉄鉱石や石炭、穀物が積み込まれる船のことです。日本造船業が一番競争力を持つのが、このバルカー市場で、造船企業の大多数が建造しております。そのため船価は安く、残念ながら低付加価値船に分類されてます。

世界の海上荷動き量の約50%がバルカーで運ばれており、そのためよく目にする機会があると思います。

港湾設備が整っていない場所でも使えるように、クレーンが搭載された船などもあります。

 

原油運搬船(オイルタンカー)

海賊と呼ばれた男をご覧になった方、タンカーの重要性が理解できたことと思います(笑)

実際問題、オイルショック以前の日本にとって石油は生命線そのものであり、中でもVLCCと呼ばれる超大型タンカーは日本から始まったといっても過言ではありません。

タンカーには原油を運ぶ原油タンカーと、石油精製品を運ぶプロダクトタンカー化学製品を運ぶケミカルタンカーなどがあります。

 

ガス運搬船(ガスタンカー)

LNG船(液化天然ガス運搬船)はこのガス運搬船に入ります。天然ガスをマイナス161.5度以下にすると液化し、それを維持しながら運ぶため高度な技術が必要とされ、高付加価値船に分類されます。

LNG船のほかエタン運搬船などもあります。

船の上に丸いタンクが付いているのがモス型LNG船と呼ばれ、日本が得意とするものです。一方、平べったい形のものがメンブレン型と呼ばれ、韓国が得意とするものです。

コンテナ船

コンテナ船ですが、現在コンテナの大きさは標準化されてます。コンテナ物語という書籍に詳しく記載されているのですが、20フィート型(TEU)と40フィート型(FEU)の2つが主流です。

コンテナ船の大きさはGTやDWTなどのトン数ではなく、積載できるコンテナの個数で表します。そのため、20,000TEUコンテナ船は20フィートのコンテナを最大2万個積める船となります。

その他

船の多くはバルク、タンカー、コンテナ船が占めることとなりますが、このほかにも様々な種類があります。客船や自動車運搬船、貨物船、艦艇、特殊船などです。

こういった書籍があるので一度目にしてみると良いと思います。

日本の造船企業

国土交通省「資料2-5 造船業の現状と課題

 

ここでは企業を見ていきましょう。なお、受注から引き渡し、解船までの流れはこの素晴らしい本を読んで、流れをつかんでください。

さて、事業者数1000社といったものの、その多くは総トン数5千トン以下の船舶を建造する会社で、身内でやっている零細などが多くあります。そのため、実際に皆さんが就活して就職するであろう造船企業はかなり限られると思います。

竣工量トップ5をご紹介

第1位ー今治造船

第1位は今治造船という会社です。私が大学院生時代に研究していた企業の1つですね。

船のデパートを目指す」というだけあり、バルクのみならず世界最大級といわれた2万TEU型コンテナやVLCCなど多彩な船種を建造しております。それでも、中手企業である以上、建造の主流はバルカーとなってますね。

自社工場もグループ傘下の企業も瀬戸内を中心に展開しておりますが、企業や工場別に最適な船種・船型の建造を分担させるなど、効率的な生産分業を行ってます。

多くの企業が世界市場で悲鳴を上げる中、世界で唯一中韓の巨大企業と戦える日本企業といえます。その今治はJMUとの資本提携を結び(噂ではJMUを救済するためとも)、日本造船業において最大のグループが誕生することとなりました。

それでも国内建造量の5割を占める程度しかなく、より一層の再編が求められるといえますね。

※ちなみに、韓国は3社で国内の90%を占め、そのうち2社が統合する予定です。統合後の企業1社で世界シェアの2割を占めることとなりますが、その後に中国国営2社の統合も発表されました。この2社で世界の4割を占めることとなります。その脅威度は計り知れないでしょう。

日本最大の商船建造企業で働きたいという方は、この会社一択でしょう。

第2位ージャパンマリンユナイテッド(JMU)

第2位はジャパンマリンユナイテッド(JMU)です。2013年に誕生したとても新しい企業です。

かつて日本を引っ張った大手企業3社(日立造船、IHI、JFE)の造船事業部と1社(住友)の艦船事業部が統合してできた企業で、事実上の大手企業連合といえます。そのため、造船所は各地に点在することとなり、商船建造は有明、呉、津の3拠点にまたがります。

※なので、造船がしたかったら日立造船やIHI、JFEに入ってはいけません。

建造船種は今治と同じく幅広いものの、大型船を中心にしていることに違いがありますね。

設備処理で大手企業は大型ドックを処理しない選択をしました。そのため、建造設備がどうしても大型船用のものとなっているのです。

また、護衛艦を建造できる2社のうち1社でもあり、ここ最近ではひゅうが型をはじめとするDDH4隻、イージス艦などを建造してます(もう1社は三菱重工)。機雷除去などを行う掃海艇の建造はJMUのみといえます。

商船から護衛艦まですべてに関わりたい方には、この会社はおすすめです。

第3位ー川崎重工

先の竣工量ランキングとは少し異なりますが、海外合弁2社を加えた川崎重工の竣工量は第3位に位置します。造船事業は船舶海洋カンパニーが行ってます。いかに海外重視で建造しているのかがわかりますね。

実は川重は日本で初めてLNG船を建造した会社でもあり、現在もモス型LNG船に搭載するタンクを製造してます。瀬戸大橋を渡る際に眼下に見える造船所がここです。

坂出はドック1基に減らし、合弁2社をドック2基体制にする方針で、今後合弁企業でLNG船の建造も視野に入れているそうです。コストのためとは言え、国内の造船所が寂れていくのは悲しいですね。

中国合弁としてはDACKS(大連中遠海運川崎船舶工程有限公司)NACKS(南通中遠川崎船舶工程有限公司)があります。

グローバルな工場体制の造船企業で働きたいのなら、ここは選択肢に入るでしょう。

第4位ー常石造船

第4位は再び中手企業に戻ります。常石造船は私が研究していてもう1つの企業でもあります(笑)

この企業は早い段階で海外進出を図っており、1967年にラバウルに展開するなどしてました。現在も国内は本社工場のみで、それ以外はフィリピンと中国に拠点があります。

中型バルカーを中心に建造しており、国内工場で建造不可能なサイズは海外で建造してます。現在今治造船傘下となった多度津造船はかつて常石造船のものでした。中手では1位と2位の両社がこういう形で関わり合いを持つのは面白いですね。

また、かねてより関係があった三井E&S造船(旧、三井造船)との資本提携が先日発表されました。三井の商船市場を手に入れるとなればさらなる成長が期待できルかもしれませんね。

グローバルな環境で働きたい方にはおすすめだといえます。

第5位ー大島造船所

大島造船所は住友重機械工業と大阪造船所、住友商事の3社が出資して誕生できました。創立後すぐにオイルショックに襲われるなど、厳しい環境下で事業を展開せざるを得ませんでした。

大島は別名「バルクの大島」と呼ばれるほどバルカーに特化しており、ドック1基で4隻同時建造など生産性は日本のみならず世界最強と言えるでしょう。

事実、年間40隻を建造するのはここだけといえます。

その大島は三菱重工長崎造船所の香焼工場新造船ドックを取得しようとしており、三菱が売却する予定でおります。香焼工場は100万トンドックと呼ばれるほど大規模な工場で、その新造ドックを取得すると建造隻数は倍増どころではありません。

どちらに転ぶのかはわかりませんが、急成長が期待できる企業といえますね。

このほかの造船企業-旧大手企業

ランキング外ですが、そのほかの企業も見ておきましょう。

三菱重工、三菱造船

三菱重工における造船事業ですが、重工本体に残ったものと分社化されたものがあります。

重工本体には護衛艦や潜水艦など防衛事業に関連する部門と、本牧工場の修繕ドックが残されました。

商船事業は三菱造船三菱重工海洋鉄構の2社に分社化されました。イメージとしては、香焼工場におけるLNG船などの大型高付加価値船が海洋鉄構で、その他商船や巡視船が三菱造船という感じです。詳しくはあまりわかりません……。私の就活時は大型客船で莫大な赤字を出したため採用そのものを見送りとなりました。

そして、大型船の建造拠点である香焼工場の建造ドックは中手企業の大島造船所への売却で話が進んでおります。事実上、三菱はLNG船などの大型船市場から撤退することとなりますね。

護衛艦や巡視船などの国防産業、あるいは客船など産業用の船ではない船種に関わりたい方にお勧めですね。

住友重機械工業

住友重機械工業の造船事業は住友重機械工業マリンエンジニアリングが担当しております。艦船事業をJMUに譲渡し、ドック1基でアフラマックスタンカーを中心に建造してます。

ドック1基といってもかなり大きなもので、かつてVLCCを建造していた名残があります。年間3~4隻を引き渡してます。

三井E&S

旧三井造船ですが、事業はかなり縮小されてます。

VLCC建造可能な千葉工場は2021年3月末までに売却が完了し、艦船事業は三菱重工に譲渡します。残りの工場は玉野艦船工場のみとなりますが、主として艦船事業の艦船を建造しているだけにどうなるのか疑問です。一様、三菱に艦船事業譲渡後も玉野で建造をする予定だそうですが。

三井としても、船舶の建造よりも設計やエンジニアリングに特化する方針を発表しているため、造船に関わりたいのであれば三井は選択肢から外したほうが良いかもしれませんね。

このほかの造船企業-旧中手企業

名村造船所

名村造船所は中手企業ではトップ5に入る企業です。自社工場は伊万里のドック1基のみですが、グループ傘下に佐世保重工業、函館どっくが入っているなど、企業規模は大きめといえます。

特に佐世保と函館は国家安全保障上重要な拠点であり、艦船修繕事業は安定しているといえるでしょう。

新来島ドック

新来島ドックは中型の特殊船に特化する戦略を選んだ企業です。そのため、建造量ランキングにはあまり入りません。

グループ傘下の企業も数社あるなど、小規模とは言えません。自動車運搬船やケミカルタンカーに特に強みがあり、世界的にもかなりのシェアを握ってます。

ちなみに、塀の無い刑務所はこの中にあります。

おわりに

造船業界に就職を希望される方、造船は世界市場に非常に左右されやすい産業で、自己の努力だけではどうしようもない事が多々あります。

スエズ運河封鎖やオイルショックなどはまさにその例です。

一方、日本の造船は船舶建造を自国で完結できる特徴があります。部品やエンジン、プロペラなど船に必要な全てが国内で調達できるのはとてもすごい事なのですよ?

この記事が少しでも役に立てば幸いです。

それでは!

 

 

 

 

 

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