日本の造船企業を知ろう!

約1,000事業者ある国内の造船業。ここでは、そのうち工業会加盟の17社を軽く紹介します!

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意外と大きな造船グループ:名村造船所

研究以外の造船記事はこちら



国内建造量1位の今治造船や、2位のジャパンマリンユナイテッドと比べると、それ以外の造船企業はあまり名が知られてません。

今回紹介する名村造船所は、国内のみの建造量ではトップ5に位置する老舗造船会社です(2018年建造量では大島造船所、三菱造船に次ぐ第5位)。

私が株主の一人ということで、紹介しようと思った次第です(笑)

それでは見ていきましょう!

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名村造船グループの現状

設備規模

国内トップ5に位置する建造量を誇る企業にまで成長しましたが、グループ全体で見ると修繕用のドックが多く見られます。新造船建造力自体はあまり大きいとは言えませんね。

新造設備は自社工場としては伊万里にあるドックのみで、他はグループ会社の佐世保重工が有するドック、そして函館どつくの函館造船所にある船台1基、同じく室蘭製作所のドック1基、船台2基で新造船事業を営んでます。

数で言うとそこそこあるのですが、室蘭のドックは新造/修繕の両用で、現状の環境では実質的に修繕用だと思われます。同じく、同地の船台2基は漁船や官公庁船といった小型船中心です(そもそも、この船台は旧楢崎造船のもので、2009年に買収しました)。

なので、パナマックスからVLCCといった大型船は伊万里と佐世保のみで、ハンディやそれ以下が函館で、となります。

 

修繕事業としては、佐世保重工に修繕ドック4基という大規模な拠点があり、施設内には米軍自衛隊共同使用のドックもあります。かつての舞鶴海軍工廠ですので、規模の大きさもさることながら、現在も軍事と関係を持っているのは独特です。

修繕は函館どつくの方も行っており、特に東北方面の大型ドックはここくらいしかありません。それこそ、護衛艦や巡視船など官公庁船にとっては必要不可欠な重要拠点であり、実際社員の方もそうおっしゃっておりました。

建造船

名村造船といえばWOZMAX(ウォージーマックス)が有名です!25 万トン型鉱石運搬船で、西豪州の鉄鉱石積出主要3港へ入港できる最大船型として開発された専用船です。

伊万里ではWOZMAXのほかVLCCやパナマックスなど、中~大型船の建造実績が多くあります。タンカーやバルカーのほか、数は少ないもののコンテナ船や高度な技術を要するLPG船の建造実績もあり、建造船種は多岐に渡ります。

ちなみに、伊万里のドックは両開き式に設計されており、同時建造が可能です。また、ドック幅が大きいので、このように異なる2隻を横に並べて建造などもできます。

 

一方、佐世保重工はパナマックスバルカーとアフラマックスタンカーを主に建造しております。かつては世界最大のタンカーである日章丸を建造するなど、大型船建造の歴史は長いです。

建造に使われる第4ドックは、海軍工廠時代に大和型戦艦の造修のため作られた第7船渠です(佐世保市より)。その大きさが良くわかると思います。残念ながら近年、佐世保でVLCCが建造された報告はありません。

 

最後に函館どつくですが、ここは東北以北最大の、かつ唯一の大型造船所とも言え、民間のみならず、護衛艦や巡視船などの安全保障上極めて重要な造船所です。

特に、冷戦期の日本は津軽海峡や宗谷海峡といった北方の海峡を監視し、ソ連軍潜水艦の動向を見極めなければなりませんでした。これは冷戦が終わった今もなお続くことです。函館を失うと、次に艦艇を修繕できるのは横須賀まで下がります。

その様な重要な拠点であるため、新造船よりも修繕船事業に注力していると考えられます。函館造船所ではハンディサイズのバルクキャリアを建造しており、室蘭製作所では漁船や漁業監視船などの小型船や官公庁船を主体に建造しております。

特に、函館どつくはHIGH BULK 34Eと呼ばれるハンディサイズの標準船を主に建造しており、3社で超大型船からハンディバルカー、漁船などの広範囲に対応できる体制を整えました。

創業100年を迎える老舗企業

名村造船のはじまりは古く、前身である名村造船鉄工所が創業したのは1913年(大正2年)だといわれてます。その後、1931年に大阪の木津川河口に存在した他の造船会社を買収し、名村造船株式会社を設立するに至ります。ちなみに、クリエイティブセンター大阪は、この跡地に建てられてます。

以下のように、企業HPに沿革が掛かれております。詳細はそちらをご覧ください。

株式会社名村造船所 | Namura Shipbuilding Co.,Ltd. - 100年にわたる進化の歴史 | 名村造船所とは? | 株式会社名村造船所
株式会社名村造船所 の100年にわたる進化の歴史をご覧いただけます。

伊万里への進出

名村造船所の転換期は、この伊万里への進出にほかなりません。

実は、戦後の船舶の大型化に伴い本社工場も拡大し続けてましたが、工場はあくまでも木津川河口に位置しており、ついに大型化に対応できなくなったのです。

当時は船舶大型化のほか、大型タンカー全盛期でもありました。石川島播磨や三菱重工が牛耳っていたVLCC(超大型原油タンカー)市場への参入は、中手企業が求めるところでもありました。

出所:名村造船HP 100年にわたる進化の歴史

※第1・第2号船渠をのぞむ(昭和41年10月)とあり、1966年の造船業がいかに近代化されているのかがわかります。

 

この問題を解決するためには、大型船の建造をやめるか、VLCC建造可能な大型ドックを有する工場をほかに作ることでした。そして、名村造船は佐賀県の伊万里に大規模なドックを有する工場を設立します。これが現在の伊万里工場です。

ちなみに、世界最大級の100万トンドックを誇る三菱重工香焼工場の設計にあたった方が、この伊万里工場の設計に携わっておられたそうです。こういう話を聞けるから、工場見学は大好きです(笑)

1972年10月に起工された伊万里工場は、2年後の1974年11月に竣工することとなります。ここではっとした方、よく調べられておりますね!そうです、この間に造船業界へ未曾有の危機を与える出来事が生じます。

名村造船もまたオイルショックの影響を避けることはできませんでした。

設備処理とグループ化

造船不況と過剰な建造設備を処理するため、日本では国策として2度の新造船設備処理が行われました。名村造船は1979年に大阪の本社工場を手放すこととなります。これにより、名村造船の新造船建造は伊万里工場のみとなります(詳しくは造船研究にて開設する予定です)。

なお、売却した大阪の工場はその後「名村重機船渠株式会社」として修繕事業に乗り出しますが、1986年に幕を閉じます(おおさか資料館より)。

また、オイルショックによるVLCC需要の激減と政府規制(並列建造規制など)により、伊万里の大型ドックはその実力を発揮できませんでした。この時期はどの造船所も同様ですね。

次に名村造船が動くのは、2001年の函館どつくのグループ化です。

今はほとんど無名ですが、函館市史ではその大きさが良く書かれています。特に、旧第4ドック(現第3ドック)はVLCC建造可能な規模で、「函館ドック クレーン撤去」でネット検索して頂くと、その時の記事が出てきます。youtubeには、このような感動的な場面の映像もあります。

大型ドックに注水31年ぶり 函館どつく (2010/10/06) 北海道新聞

ちなみに、オイルショックで函館ドックは経営破綻し、来島グループ(現、新来島ドック)傘下に入ります。その後来島グループ自体が傾き、1988年にグループから離れます。

2006年からは伊万里の建造能力を向上させるために積極的に投資し、そして2014年ついに新たなグループ参入者が出ます。佐世保重工業の完全子会社化です。

名村造船所社長 名村建介 スタートラインに立ったに過ぎない
2014年10月1日付で、中堅造船会社の名村造船所グループ(建造量で国内4位)は、佐世保重工業(同10位)を完全子会社化する。これで、今治造船グループ、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)に次ぐ、第3グループの誕生となる。

佐世保重工もまたオイルショックで破綻寸前まで陥り、これも来島グループにより再建されることとなりました。ノンフィクション小説ですが、小説会社再建 太陽を、つかむ男 (集英社文庫)で詳しく書かれております。来島そのものが傾き、再建は途中で失敗することとなります。

名村造船の今後

名村造船ですが、株価は右肩下がりで落ち続けております。株主の一人としては残念です……。

2017年に三菱重工が今治造船、大島造船、そして名村造船との提携を進めると発表しました。現在はどうなったかはわかりませんが、三菱からの技術支援などがあるのかもしれませんね。

漁船や官公庁船からVLCCまで幅広く受注できる体制にありますが、それを活かせるほどの受注は出来ていなさそうです。2020年3月期 決算でも書かれているように、工程混乱や納期遅れなどで、佐世保と函館は大変なことになってました。

ただ、問題は解消に向かったとも書かれておりますので、今後は売上が良くなる可能性もあります。

また修繕規模は非常に高く、商船のみならず官公庁船の実績もあります。それこそ佐世保と函館と言った重要拠点に展開しているため、今後艦艇が増加する中でより一層存在感が出ることでしょう。

おわりに

今治やJMUは聞いたことがある方も多いと思いますが、大阪に本社がある名村はパッとしません。ドックが伊万里ということもあり、九州の方はよくご存知でした。

今回はたまたま株主と言うことで題材にしましたが、アクセスが多ければ他の会社でこういう記事を書こうかなと思います。

それでは~(>_<)

 

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