速報です。
名村造船所グループ傘下の佐世保重工業は、商船建造を一時休止し、艦艇修繕のみに特化する方針を立てました。
早速発表内容を見ていきましょう。
~お品書き~
連結子会社における事業の一部休止、希望退職者の募集および特別損失の計上に関するお知らせ
名村造船公式からの発表文はこちらからどうぞ。
簡潔にまとめると、以下のようになります。
①世界的な造船不況は回復傾向を見せず、日本全体の受注残も1年程度に落ち込んでいる。それは、名村造船グループも例外ではない。
②佐世保重工の新造船事業継続のため設備更新や名村造船伊万里工場との一体運営など対策を行ってきたが、佐世保は新鋭造船所に比べコスト競争力が大きく劣っており、短期間に解決できないと判断。
③一方で、佐世保は艦艇修繕に強みを持っており、今後は新造船ではなく艦艇修繕を柱とする抜本的な事業改革に乗り出した。
④今後の佐世保は艦艇修繕事業と機械事業となる。
佐世保重工とは
概要
佐世保重工業は佐世保海軍工廠を継承する造船企業で、原油タンカー日章丸などタンカーの建造でその名を広めておりました。
オイルショック後は事実上の倒産状態となり、新来島ドックが親会社となり立て直しを図りました。
残念ながら?新来島がオイルショック不況で危機的状況を迎え、佐世保はグループから抜けることとなります。
その後も独立を保っておりましたが、名村造船グループ傘下となり、今に至ります。
新造・修繕船事業
佐世保は新造用のドック1基と修繕用ドック4基を有しており、このほか日米両軍が共同利用する修繕ドックが1基あります。
出所:佐世保重工業HP工場案内より。
建造用の第4ドックはもともと大和級戦艦の修繕のために作られたもので、その大きさがよくわかると思います。DWT30万トン以上のULCC(超巨大原油タンカー)でさえ建造可能な規模です。
名村造船傘下後は主にパナマックスバルカーとアフラマックスタンカーを建造してます。
修繕事業でも40万DWT船舶の入渠が可能で、多数の修繕ドックと係船岸壁など年間540万総トンの修繕能力を持ちます。
修繕能力では国内でもトップクラスの容量を持つといえますね。
名村造船の今後
では、佐世保の新造船休止で名村造船は今後どうなるのか。
少し予想してみましょう。
建造分担
まず建造分担についてです。
見るところ、伊万里がケープサイズバルカーやVLOC、VLCCを建造し、佐世保がパナマックスバルカーとアフラマックスタンカー、函館がスモールハンディという分担があったといえます。
しかし佐世保の休止により、アフラマックスタンカーとパナマックスバルカーの建造拠点が失われることとなります。
この2種については伊万里にて建造可能で、建造実績もあります。製品の幅自体には大きな変化はないといえますね。
ただ、伊万里はもともとVLCC建造の為に新設された工場であり、当然超大型船の建造を前提としてます。名村が得意とするVLOCやケープサイズバルカー、VLCCを受注すると設備の不足でパナマックスバルカーとアフラマックスタンカーなどは対応不可となります。
なお、スモールハンディは函館でしか建造していないので問題なしです。
ちなみに、新造から修繕に変更した企業としてJMU舞鶴事業所があります。同社も元々舞鶴海軍工廠で、パナマックスバルカーやプロダクトタンカーを建造してました。
売上高
売上は間違いなく減少します。佐世保の新造船事業は名村全体の新造船売上の20%を占めますので。
出所:名村造船「連結子会社における事業の一部休止、希望退職者の募集および特別損失の計上に関するお知らせ」より。
このほか退職金などの人件費も必要となってきますが、現在その内訳などは未確定として発表を見送ってます。
終わりに
佐世保重工は何か憑かれているのか?と思うほど経営危機によく陥ってます。
前回は再建王坪内氏により何とか保ちましたが、今回はどうなるのか予想がつきません。特に名村自体が危機に瀕しており、株価もかなり危険な水準となってます。
※名村は余剰資産が多量にあり、すぐさま倒産することはないといえましょう。
しかし、艦艇修繕において名村は北方最大の拠点である函館と、南西方面の一大拠点である佐世保を有しており、国防上重要な企業となってます。
新来島と同じ道をたどるのか、異なる結果を手に入れられるのか。
注視していきたいと思います。
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