日本の造船企業を知ろう!

約1,000事業者ある国内の造船業。ここでは、そのうち工業会加盟の17社を軽く紹介します!

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三菱重工香焼と大島造船所

研究以外の造船記事はこちら

これらの本を読むと、造船についてわかりやすくなります。ぜひおすすめです。

 

さて、前回三菱が香焼工場を大島に売却することについて、記事を書きました。

三菱の決断?造船再編
三井E&S千葉工場の売却にはじまり、今治とJMUの資本提携、そして今回は三菱(MHI)の100万トンドックである香焼工場が売却される運びとなりました。

 

それから約3か月、ついに続報が届きました。その内容を見ていきましょう!

エラー|NHK NEWS WEB
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香焼工場は売却されるのか?

まず、香焼工場は売却するということで一致したことがうかがえます。売却先企業も前回のまま大島造船所です。

ただし、売却内容については香焼工場の新造船設備にとどまるそうです。なので、大島造船所にとっては現在有する唯一のドックである本社ドック(長さ535m、幅80m)にプラスして香焼工場の100万トンドック(長さ990m、幅100m)と、計2基のドックを有することとなります。

ただし、2基といっても香焼のは世界最大と言える規模ですので、実質的には本社と同じ規模のドックを新たに2基手に入れたと見た方が正しいです。

ちなみに、大島造船は本社ドックで4隻同時建造してます。香焼ドックと合わせて、バルクキャリア12隻連続同時建造なんてこともあるかもしれませんね(笑)

三菱重香焼工場 売却検討 大島造船所 事業拡大に意欲 建造ドック対象か、社員処遇も課題より。

なぜ修繕ドックは手放さない?

香焼工場のすべてを大島が買い取るということは不可能に近いです。それだけの資金力はありませんし、そもそも大島は修繕船事業を行っておりません

一方、三菱は大型客船の建造から撤退する方向を示してます。しかし、客船の修繕事業から撤退するわけではありません。事実、長崎港をクルーズ船修繕の拠点にすることを目指し、官民一体で調整を行っております。

そのクルーズ船修繕拠点が、香焼工場の修繕ドックにほかなりません。特に、中国や東南アジアに近い長崎という立地は非常に優位性があり、修繕技術力に関しても申し分ありません。

重要な問題は、人件費などのコストが劣位にあることです。香焼では今、コロナによる中国封鎖に伴い、クルーズ船会社が中国で予定していた修繕を行ってます。中国がダメなら日本に、というのが現状です。

クルーズ船修繕、中国から日本に変更 三菱重工長崎香焼工場で初受注 - 毎日新聞
 三菱重工業長崎造船所香焼工場(長崎市)のドックと岸壁に、大型クルーズ船3隻が停泊する珍しい光景が広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、イタリアの船会社が中国の拠点で修繕・停泊する予定を変更したためだ。三菱重工は25日、このうち「コスタ・アトランチカ」(8万6000トン)について、香焼工

また、香焼では上五島国家石油備蓄基地の原油貯蔵船も修繕しております。安定しているとは言えませんが、今回の客船などの修繕が増えてきたら業績は回復する可能性がありますね。

ただ、中国発着の客船を中国の造船所で修繕するというのは、非常に政治的な要因も含まれていることだと思います。その点をいかにクリアしていくのかが問題でしょう。

上五島国家石油備蓄基地の原油貯蔵船上五島4号入渠(にゅうきょ:ドックイン)工事について : ニュースリリース | 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構[JOGMEC]
JOGMECは、石油・天然ガス、金属、石炭、地熱に関する開発支援やメタンハイドレートなどの新エネルギーの開発、資源備蓄事業等を通じて、国民の生活や産業を支えています。

これからどうなる?

大島にとっての香焼取得

実は、大島はかつて海外進出を図ったことがあります。ベトナムへ造船所を建設する、本格的な進出でした。市況の悪化に伴い現地を生産拠点とすることはなくなりました。現在は一部の設計を担当しております

そのため、今回の香焼工場取得は①国内の、それも本社に近い場所で完成されたドックを手に入れられる、②ケープサイズなど大型船を香焼で建造し、バルク連続建造を本社で行うなど、生産分業が可能となる。といった利点があります。

一方、その雇用についてはどうなるのかわかりません。三菱と同じレベルの賃金を大島が払えるとは思えません。作業員などは協力会社からですので無視できますが……。

また、建造船種に関しては、これまで通りバルクを基本とすると思います。さすがに客船やLNG船などを手掛けるのを大島は考えていないと思います。

三菱にとっての香焼売却

三菱にとっての香焼工場は、VLCC連続建造による世界1位の獲得という夢の表れでした。オイルショックで市場が崩壊し、LNG船や客船を主体に建造する戦略の結果、現在商船事業は分社化されています。

プライドを捨て、今治造船の下請けとなったとまで評されるほど、三菱にとって商船市況は悪く、今回の売却で負債を減少できたと考えられるのではないでしょうか?特に、VLCC建造はかつて大手にしかできないほど設備や技術が必要なものでしたが、現在は今治造船や名村造船といった中手企業も建造を行っております。今治や名村と提携関係にある三菱にとって、もう香焼の新造船設備は不要なのかもしれません。

また、大型船の修繕設備は三菱香焼のほか佐世保重工業もあります。ただし大型客船を建造してきた三菱の実績を無視できません。佐世保で大型客船の修繕が行われることはあまりないと思います。

フェリーやLNG船の建造は下関で、艦船は長崎本工場で、大型客船の修繕は香焼でという分業体制は悪くないと思います。艦船建造が無いため本工場でフェリーなども建造しておりますが、これからは海自向けFFM建造が始まりますので、問題なくなるでしょう。

日本造船業の再編へ

さて、いかがだったでしょうか?

情報が少なくあまり確かなことが言えませんが、日本の造船産業が再編へ向かっていることは間違いありません。ただし、この再編が競争環境が極限に悪化したために行われたという点は残念です。

三菱の香焼も、三井の千葉も、JMUの舞鶴も、すべて市況が悪く仕事がないために行われました。もっと早く対策を打てていればまだマシだったのかもしれません。

一方、中国国営2社の統合や韓国造船業の再編などが日本造船業に圧力をかけていることは間違いありません。今後中手造船業も再編を強いられることとなると思いますが、どうなるのか予測がつきません。

また違法ともいえる政府の支援を受ける韓国造船業の行方についても、予断を許しません。

今後に期待です。

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