少し前になりますが、新来島どっくが防衛省から内航型タンカー2隻を受注したとプレスがありました。
建造造船所は新来島波止浜どっくで、納期は22年4月と7月だそうです。
ちなみに、新来島は坪内氏と深い関係にあります。こちらのノンフィクション小説はお勧めです。
~お品書き~
海自が有する燃料輸送の装備
海上自衛隊において、燃料輸送を行い得るアセットは大きく二種類存在するとされてます。詳しくはこちら海上自衛隊幹部学校コラム129をご覧ください。
洋上補給型
1つ目は、艦艇部隊の洋上補給用アセットです。
洋上補給用アセットに要求される能力を細分すると、艦内に搭載した燃料を基地や停泊中の艦艇に補給する能力、単独で外洋を航海する能力、艦内に搭載した燃料を洋上で行動中の護衛艦に補給する能力の三つに整理することができる。
本記事のアイキャッチ画像のように、海上で航行中の護衛艦に対して燃料を補給できるタイプですね。
今はとわだ型とましゅう型は就役してます。
青島文化教材社 1/700 ウォーターラインシリーズ No.33 海上自衛隊 補給艦 ましゅう プラモデル
ちなみに、ましゅう型はいずも型が登場するまでは海自では最大の船でした。
湾内補給型
もう1つは、湾内に停泊中の艦艇に対して補給するタイプです。
第二は、各地方隊に配備された支援船であり、いわゆるポート・サービス用アセットである。艦艇用主燃料や航空機用主燃料を搭載する支援船YO・YGは、港内において行動する。
湾内での活動を前提とした小型の船ですね。
海自の燃料輸送状態
今回新来島どっくが受注したのは、このどちらのタイプにも属しません。
むしろ、民間が持つ内航用タンカーに近いものとなってます。
自衛隊は自己完結型の組織だと言われてます。有事の際はそうでなければなりませんからね。
しかし、なにも平時においてもすべて自己完結する必要はありません。
平時における国内の海自基地に対する燃料輸送は、民間企業が担当してます。先の大戦でも貨物船や輸送船は民間が行い、莫大な損失を出しましたね。
この経験から、有事に民間が基地間輸送を絶対に行うのかは大いに疑問が生じます。
そして、陸送ではタンカーなどで賄えますが、沖縄などの離島ではそれは叶わないのです。
「現状、海自の基地が燃料の補給を発注してから届くまでには2カ月かかる。」と言われており、中国の海洋進出に伴う沖縄近海の状況を考えると、自前で有した方が不確実性は減少します。
4,900トン型油槽船(YOT)
新来島どっくグループは、中型の高付加価値船に特化した中手企業です。かつては佐世保重工も傘下に入れるなどあり、今でも日本造船業の一端を担ってます。
特に、自動車運搬船は世界的に有名で、世界シェアの約17%を占めてます。
5,500㎥クラスの民間向けタンカーの建造実績もありますし、建造に問題はありません。一部特別な要求もあるとは思いますが……。
防衛予算に限りある中、お金がかかる軍艦建造より商船建造の方が安上がりです。何より、船舶自体が基地間輸送なので、わざわざ高コスト体質にする必要はありません。
海自にとって輸送計画が立てやすくなるのが良い点ですね。
おわりに
十分な燃料輸送力の確保。
このタンカー調達はとどのつまりそこに集約されます。
2隻調達するので、輸送力は大幅にアップすることとなります。
また、国内造船業の支援としても優秀だと思います。艦艇と異なり商船構造であれば民間造船所に建造を依頼できますし。
国による造船業への支援が少ない今、このような形であってもありがたい事なのではないでしょうか?
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