5/29:住友を追加しました
7/14:今治造船、新来島ドックを追加しました。
9/3:大島造船の追加、一部記事の修正を行いました。
皆さんこんにちは!
世界的に猛威を振るうコロナウイルスですが、GWでひと段落したと思い外出される方が多くて驚いております。
さて、造船業界ですが、コロナウイルスの影響で決算発表が遅れている企業が多くあります。致し方ない事ですね……泣。
しかし、コロナで世界的に荷動きが減少している中では新規発注も少ないことと思います。アフターコロナでも恐らく荷動きの回復は時間がかかる事でしょう。
一方で、三菱が中国で予定されていた大型客船の修繕を受注できるなど、変化もまたありました。三井と川重の共同修繕事業であるMES-KHI由良ドックなど、修繕専門の企業は特需状態だそうです。
~お品書き~
中国と日韓造船企業の関係
コロナウイルスが当初武漢ウイルスと言われていたように、最初に発症したのは中国からでした。
そして、船体ブロックを中国の企業に発注している造船会社が日韓両国にあります。韓国ではサムソン重工の記事が上がってます。日本では今治造船が大連今岡船務工程という会社を設立してましたが、今はどうかはわかりません……。
船体ブロックのみならず、造船所を持つ企業もあります。代表的なのは常石や川重ですね。中国ではすでに回復段階に進んでいるそうですが、どれほどの影響があるのかは予測がつきません。
ただし、川重の決算資料では次のように書かれており、これを信じるのであればあまり大きな事態ではなさそうです。
新型コロナウィルス感染症拡大の影響
(2020年度見通し)
• 現段階で既受注船の納期延長等の申入れはないものの、
商談の遅れによる案件の成約時期の後ろ倒しが懸念される
• なお、業績への影響は限定的
上場企業の造船決算
川崎重工船舶海洋カンパニー
営業利益と同利益率かマイナスで、非常に厳しい状況が伺えます。一方で坂出のドックを1本にし中国へ建造をシフトするなど、対応は以前から行われております。
DACKSとNACKSの2社は設備の増強を継続しており、国内では坂出でガス船、神戸で潜水艦の建造となってます。
しかし、DACKSでLNG船の建造も予定しているなど、もはや国内での建造を終えるのも時間の問題なのかもしれません。マザー工場としてではなく、LNGタンクの建造拠点として残る事はあるかもですが。
三井E&S造船
三井E&SHDの造船部門である三井E&S造船(旧三井造船)ですが、こちらはハッキリと赤字です。ただ、昨年度よりもかなり改善はなされており、また千葉工場から撤退し玉野艦船工場に集中するなど、来期に期待できる要因は無くはありません。
それでも、厳しいことに違いはありません。唯一の救いは海自が大量建造を予定しているFFMの建造でしょうか。玉野は官公庁船に強みがありますので、それに特化してもおかしくはありません。JMUとの協業などもあるかもしれませんね。
※三井造船は艦船事業を三菱に譲渡し、商船事業で常石と提携を発表しました。
住友重機械工業
住友重機は約1,200億もの減少を記録しております。総合重機なだけあって、桁がすごいですね。1株当たりの配当も少なくなっており、株価も1,600円台に突入したこともありました。お金があれば買いたかったです……泣。
さて、船舶セグメントを見ていきましょう。
残念ながら、営業利益マイナス21億円となっております。ほかのセグメントは減少数も利益を出しているだけに、際立ってますね。
新造船の受注は3隻で、引き渡しは4隻で、どちらも前期と同じだったそうです。ただ、修繕案件が減少したことと台風の影響で営業損失が発生したと書かれてます。
住友は艦船事業を現在のJMUに委譲しており、建造船は商船に限られます。なお、建造船をアフラマックスタンカーに特化してます。
サノヤスホールディングス
サノヤスは前期はホールディングスとしては黒字でしたが、今回は赤字です。造船事業も残念ながら赤字でした。
水島にある工場で主にハンディマックスからパナマックスバルカーを建造しております。造船事業の重荷がまだ高いですが、多角化を進めており、着々と陸上がりを目指してますね。LPGタンクの製造も手掛けており、造船専業と言えなくなる日もそう遠くはないでしょう。
名村造船
名村造船は昨年度に続き経常利益がマイナスでした。売上高、営業利益、経常利益の全てが昨年期よりもマイナスになっており、株主の一人として不安です。
また、名村造船はグループ傘下に佐世保重工と函館ドックがあり、この両社の損失もかなり影響してます。「佐世保の工程混乱による後続船納期延期の問題を最優先課題」と、わざわざ記載するほどです。
ただ、上記問題はほぼ解決できると報告されてますので、次期決算は回復すると予想できます。
また、佐世保では海自艦艇の修繕も行っておりますので、今後艦艇数が増えることは大きくプラスになる事でしょう。
内海造船
内海造船はコロナの影響を受けつつも、赤字転落はありませんでした。前期よりかは利益額が少ないですが、それでも黒字にいるだけでも良い事でしょう。
内海は主にフェリーやRORO船に強みがあり、厳島神社へ行くために使う宮島フェリーもこの会社で作られた客船です。
非上場企業の決算発表
非上場企業はirが無い所がほとんどで、情報公開にあまり積極的ではありません。
新聞などで手に入れて頑張る所存です(笑)
ジャパンマリンユナイテッド
JMUは今回赤字転落です。前回は3億円の黒字とそもそもあまり多くはありません。今回は390億の赤字です。
「舞鶴事業所で新造船から撤退することに伴い、会計上、生産設備の価値が目減りすることなどが響いた。」とあるように、今JMUは再編の波の中にいます。
これから再編が行われ、今治との協業が待っております。各地に生産設備が広がってしまっている現状が変われば少しは改善されるかもですね。
今治造船
天下の今治造船も、残念ながら減収となりました。
2019年度の売上高は、低船価の竣工船のため3,806億円となり減収減益となりました。 2020年度も、各種ばら積み貨物船やコンテナ船の建造が続きますが、収益改善に努めて参りたいと思っております。
97隻525万総トン(総トン数ベースで過去最高)を引き渡したとあるように、建造の主体がバルクといった低付加価値船が多かったようです。
また、「大型船は船価の違いから受注を控えることにしました」とあり、大型ドックでの効率的な建造が出来なかったのかもしれません。
ただし、今年からはVLCCや大型コンテナ船の建造を開始する予定らしく、すでに発表されたJMUとの提携もありますので、比較的明るい未来があるのではないかと思います。
私個人としては、今治の大型船設備と大型建造を中心とするJMUの提携は、大型船のロット受注に対応できる点から望ましいですので、やっと世界市場に復帰できたと考えます。
※2019年9月で丸亀工場と西条工場で連続建造しておりました20,000TEU型コンテナ船が13隻全て引渡しを完了する予定となっています。来年からは11,000TEU型コンテナ船の連続建造が始まります。(2019年の発表から)。
常石造船
決算気が12月なので、他とは異なります。純利益がマイナス56億の赤字で、また中国に工場を持っているためころなの影響も受けることとなるでしょう。
バルクキャリアに強みがあり、日本、中国、フィリピンの3ヵ国で建造できるため、為替にも柔軟に対応できます。
大島造船
1ドックでは世界最高の生産性を誇る大島造船所は、売上高自体は昨年度よりも増加していたものの、各種利益は大幅赤字となりました。バルクの大島といわれるだけあり、どうしても低付加価値船が多く、厳しい環境下にあることと思います。
一方、三菱の香焼工場の建造ドックを譲り受ける話もあり、今後どうなるのか期待が持てる企業でもあります。国内に大型ドック2基を有するのは、中手では今治のほか名村くらいでしょうからね。
新来島どっく
中小型の高付加価値船に集中している新来島も、売り上げは減少することとなりました。
「売上高が前の期比16%減の974億円、純利益が92%減の8300万円だった。新造船は前年より3隻多い37隻完工したが、船価の高い自動車運搬船やケミカル船が減り、中小型のばら積み船が増えたため減収となった。」(日経新聞より)。
純利益92%減という数値を出しながらも、赤字転落ではないところに、今日までの堅実な経営が見れます。
ただし、高付加価値船を受注できなければ次期はまずいかもしれません。自動車運搬船とケミカルタンカーに強みがある一方、バルクキャリアであれば大島造船や今治造船に強みがあるためです。
コメント