日本型雇用形態と呼ばれるものをご存じでしょうか?
日本が輝いていた時代、海外の学者がどうして日本企業が強いのかを分析した際に導き出した要因で、①終身雇用、②年功序列型の賃金体系、③企業別労働組合の3つです。
そして、それこそが今の異常な労働環境を作ってしまったとも言えます……。
~お品書き~
なぜ日本型雇用形態が強みになったのか?
戦後日本は今と比べてはるかに悪い環境でした。少なくとも現在の先進国日本を作ったのは彼ら戦前戦中、そして戦後初期時代の労働者たちです。それについては感謝の意を表するべきでしょう。
さて、なぜこの3種の神器が強みであったかというと、極めて理論的な流れがありました。
年功序列
食べるものも、そもそも働くことでさえ困難な戦後日本。特に困ったのは家庭を持つ父親でした。そこで生み出されたのが年功序列型賃金でした。
とにかく家族持ちに高い賃金を渡さなければなりませんでした。さもなければ一家共倒れになりますから。
なので、まだ家庭を持たない、あるいは夫婦のみでまだ子供が生まれていない若者の給料を少なくしたのです。必要なお金の額がまだ低いわけですからね。
しかし、そうすると若者は同じだけ働いているのに給料が低いのは不公平だと感じます。そこで現れるのが終身雇用です。
終身雇用
若いうちはどれほど頑張っても給料は少ないけど、将来的には必ずそれに見合った給料を支払うことを約束したのです。これにより、雇用が守られるのみならず、一社で最期まで務めることから企業専門知識が豊富に得られ、企業にとって重要な戦力となりました。
そして、実際に当時若者だった彼らは年齢により役職が上がり、給料もそれに応じるものとなりました。
企業別労働組合
さらに、産業別の労働組合ではなく企業別に作られた労働組合が労使協調という独自の文化を育んでいきました。他産業や他企業ではなく、自社の労働組合として誕生したのです。
そのため、ダイレクトに労働者と関係を築く事が出来、過剰な労働活動はなくなりました。
日本型雇用形態のデメリット
戦後に貧しい時代に見合ったシステムである日本型雇用形態ですが、デメリットもまたあります。
まず、年功序列型のシステムは前提として永続的に企業が成長することを元に作られております。就職困難下では働けるだけマシですが、そうでなければ、現在の低成長あるいは衰退期において、若者にはメリットがありません。
次に終身雇用、つまりは定年まで1社で務めることの問題点です。雇用の流動性が低いままというのももちろんですが、ホールドアップ(お手上げ)問題というものもあります。自社でしか使えない技術のみが身につき、他社では全く活かせないのです。つまり、会社から出たくても出られないということですね。
最後の企業別労働組合ですが、労使協調とは画期的な考えである一方、それは労働者は自社以外に目を向けないことや、労働者に企業のため耐えてくれという経営側の傲慢でもあります。現在の異常な労働環境や過労死を美徳とする働き方も、企業別の組合という存在だったからこそ生じたものかもしれませんね。
特に”下請けいじめ”と呼ばれるのは、もし産業別組合なら同じ組合員になっていた可能性もありますから、現在とは大きく異なる環境だったのかもしれません。
失われた世代へ
さて、失われた30年と呼ばれ、次は40年にも差し掛かろうとしております。残念ながら、経済復活はなされず、平成世代は好景気を知らないまま令和へと突入しました。もしかしたら今が本当の経済力なのかもしれませんが……。
一方で、雇用形態は悪い部分だけ残り、良い部分は滅んでいったといえるでしょう。今もなお過労死は続き、労働によるうつ病など精神疾患者は先進国では上位に入るほどの数があります。
終身雇用が残っているため中途退職者は裏切り者として扱われ、雇用の流動性が低いため中途採用は非常に慎重になってます。
また、新たに生まれた契約社員が企業にとって人件費削減をもたらした一方、貧困層を増加させることにもなりました。労働の高度化に伴い、仕事は簡単になり、その結果として大量に採用する労働者には質を求める必要はなくなったといえます。
変わることはできるのか?
現在は実力主義という考えが入り込んできました。しかし、日本型の実力主義は非常にガラパゴス化したものとなってます。それは、年功序列+実力主義というものです。更に悪いことに、残業代を抑制するため犯罪的な使われ方がされてます。
出勤時間は決められており、時間内に終わらない量の仕事を与えられ、しかし勤務時間内に終われないのは本人の無能であるから残業代は払わないなどですね。最悪なのはみなし残業制なので残業代はないというパターンでしょう。
そして、残念ながら今後改善されるという可能性は非常に少ないといえるでしょう。
そんな中でどう生きていくのか
自己投資と副業。これにつきます。転職してもあまり変わりません。
副業といっても多くの方はサラリーマンだと思います。株式取引やFXなどは時間的に不可能ですし、そもそも初心者が足を踏み入れてよい世界ではありません。
もし金融取引に興味があるのなら、せめてロボアドバイザーや投資信託(銀行のものではなく、ネットで自分で行うものに限る)にとどめておいてください。
では何をするかというと、自己投資を副業につなげる作業です。
例えば私の場合、大学院で造船を研究してきたという自己投資が、このブログでアクセスの高い造船記事につながってます。
もちろん、これはとても恵まれた環境下で得たものであり、普通のものではありません。
では、経営学の書籍を読み、それに関連した話を記事にしてはどうでしょうか?例えば、ある会社の製品についてマーケティング論の目線から紹介したりなどできますよね。あるいは新型のゲーム機と前世代の機種を比較し、それをイノベーションの観点から解説するなど、いくらでも書投げられますよね。
経営学のみではありません。メンタルヘルスの資格を学び取得すれば、自らが後輩にどのように指導しているのかもありですね。
とにかく、いくらでも探せばあるのです。そして、それを始めるにはどうしても自己投資が必要となります。
自己投資の方法
自己投資を聞くとどうしてもセミナーへの参加や書籍の読了などを想像することと思いますが、何もそれだけではありません。youtubeなどで無料で聞くだけで学べることだってたくさんあります。
忙しくて本屋に行けない?ならアマゾンで新作を探せば済みます。しかも家まで郵送してくれます。
何を学べば良いかわからない?なら将来自分はどういう人生を過ごしたいのかを想像してください。例えば「働かずに収入を得て過ごしたい」と思うなら、そうできる体制を整えましょう。不動産投資や株式投資など、不労働収入を得る方法が一番近いでしょうね。
とにかく、なりたい自己の姿をまず決める作業から開始していきましょう。そこまでのプロセスは追い追い決定していけばよいのです。
もちろん、逆にいろいろなことを大量に試してみても良いです。お金も時間もかかりますが、これだっ!という何かがわかるのかもしれません。
僕たちが生きる残酷な世界
日本はこれからも先進国として世界に存在感を示しますが、過労死や異常な労働環境がなくなることはありません。労働者が経営陣に対して服従の姿勢をしているのですから、経営陣も特に変える必要性を感じないのです。
そして、日本人は労働法を学ばずに社会に送り込まれます。義務教育課程でも、大学教育でも日本社会に不利になる情報は遮断されています。残業代の未払いや異常な拘束時間などは明確な犯罪行為です。
ただ、残念なことに刃物で人を殺すと大規模に報道されますが、企業が労働者を殺害しても大きな報道はされず、企業の賠償金もそれほど高くありません。さらに、労働者に支払うボーナスを減らし、それを原資に賠償金に充てることだって可能です。
「現在の日本は過労死を問題視していない」というのも、もはや過言ではありません。
過労死したいのなら今のまま過ごせばよいですが、人としていきたいのなら今一度人生を見直してみてはいかがでしょうか?
それでは。
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