日本の造船会社一覧

ところで、皆さんは日本には造船事業者がいくつあると思いますか?

答えは、なんと1,000事業者なんです。

ただし、我々が知るのはそのうちのほんの少し。

そこで、今回は日本造船工業会の会員企業を軽く見ていきましょう!

 

本記事は、『日本の造船産業を軽く紹介』の続きです。もしよければこちらもご覧ください。

日本の造船産業を軽く紹介
今回は、日本の造船企業を軽く紹介していきます! 四面を海に囲まれた島国日本。もし船が無ければ干上がってしまうほど、わが国は非常に脆弱な環境にあります。 では、それを支える日本の造船業を、我々はどれほど知っているのでしょうか?

日本の造船業

出所:造船市場の現状

 

日本の造船業には、①大手重工業の造船部門②オーナー系の造船専業企業の2つがあります。

大手重工業とは、三菱、三井、IHI、日立、住友、川崎、鋼管の7社があります。現在、このうち日立、IHI、鋼管の3社の造船事業部が統合しJMUになりました(住友の艦船事業のみがJMUに統合され、商船事業は住友に残ってます)。

オイルショック前まではこの7社が日本国内の建造量の80%以上を建造してましたが、しかし、その後の市況からシェアは右肩下がりとなりました。

その一方で急激に大手企業に追い付いてきたのが、今治や新来島などのいわゆる中手造船業です。

この大手と中手の逆転などに関してはこちらの造船研究にまとめますので、参考までにご覧ください。

造船研究
造船関係はこちらです。   かつて日本といえば造船という時代がありました。 世界最大の建造量を誇り、世界最大の船を常に更新する、まさに最強の存在でした。 今、その姿は見られません。 オイルショックに伴う造船不況とプラザ合意による急激な円高、...

旧、大手重工業

オイルショックまでの大手企業の建造船種は、VLCCなどの超大型石油タンカーが主流でした。タンカーの大型化に対応するためにより大規模な工場を設立していき、巨大化していったのです。

しかし、石油タンカー需要はオイルショックにより激減します。大手と中手の建造量の逆転はここにあるといっても過言ではありません。

本来は中手企業が建造していた小~中型バルクキャリア市場に大手企業が乱入、大手と中手の双方が血みどろの戦いを行い、結果国策として造船産業は管理されることとなります。

現在、大手と中手という分類の仕方は古くなりました。大手の建造船種も変化し、その戦略もまた変わっていきました。

まずは、大手企業を見ていきましょう。

高付加価値船特化型

三菱重工

三菱重工はオイルショック後、欧州の造船業のように高付加価値船へ建造船をシフトする戦略を選びました。

神戸の工場では潜水艦を中心に建造してますので、実質的な商船建造は下関、長崎-本工場、長崎-香焼工場の3拠点で行ってます。

その三菱ですが、祖業である商船事業は本体から切り離されております。

https://www.mlit.go.jp/common/001217901.pdf

これは、大型客船のアイーダ船2隻が莫大な赤字を吐き出し、分社化を検討、実行された経緯があります。

現在は艦艇事業は本体に残っておりますが、それ以外の商船事業は①船舶の設計や建造を行うのが三菱造船として分社化され、②大型船建造の拠点である香焼工場を中心に大型船と海洋鉄構構造物を製造販売するのが三菱重工海洋鉄構として分社化されました。

※この海洋鉄構はグループ2社の統合ですが、ここでは省いてます。詳細はHPをご覧ください。

建造船種は客船や官公庁船、LNG船、特殊船など複数の高付加価値船に絞り込むのが国内の他企業との違いですね。そのため、国内企業よりも欧州造船業や韓国企業群との競争が行われてます。

川崎重工

川崎重工もまた高付加価値船へシフトした企業の1つです。しかし、三菱の造船事業が国内でとどまっている中、川重は高付加価値船を国内工場で建造し、その他船舶を海外合弁会社にて建造する体制を取っております。

川重の国内工場は神戸と坂出の2か所があります。この他、修繕工場として三井E&Sと合弁のMES-KHI由良ドックがあります。

神戸は主として潜水艦を建造しており、国内の商船建造は坂出工場のみです。その坂出工場はドックを1基削減するなど、海外合弁企業への生産シフトを強めております。

このため、商船建造は中国にある南通中遠川崎船舶工程有限公司(NACKS)大連中遠川崎船舶工程有限公司(DACKS)を中心に建造する方針です。またブラジルのドリルシップなどを手掛けるESTALEIRO ENSEADA DO PARAGUAÇU S.A.(エスタレーロ エンセアーダ ド パラグワス )へ出資もしております。

生産分業としては、当初、坂出にてLPG船とLNG船の高付加価値船の建造に特化し、バルクなどの低付加価値船を中国の企業に任せる方針でした。国内で高付加価値船を、海外拠点で低付加価値船を建造するという点で、三菱とは異なりますね。

なお、その中国でも高付加価値船の建造を進めております。中国合弁企業の成長に伴い生産をシフトしたのが、この坂出工場の設備削減が意味するところです。

いよいよ日本で商船をする必要性が少なくなりますが、いったいどうするのでしょうか……?

建造船種デパート型

JMU

国内建造量2位のJMUは、ユニバーサル造船とIHIマリンユナイテッドの2社が経営統合し誕生した企業です。

JMU:最長の歴史を持つ新生児?
造船企業紹介、第4弾はついに大手企業に進出しますよ! 今回は、国内建造量ランキング第2位のジャパンマリンユナイテッドです。 合併に次ぐ合併を繰り返し、誕生したのは2013年のこと。 かつて世界の造船業を牛耳った造船王国の遺産を、この記事で発掘していきます。

ユニバーサル造船とは日本鋼管(現、JFE)と日立造船の造船事業部門が経営統合し誕生した企業で、IHI-MUはIHIの船舶・海洋部門と住友の艦艇部門の統合で誕生しました。

そのため、工場設備は有明や呉、津、舞鶴、横浜、因島と全国的に広がっております。

 

JMUは一言で言うと船のデパートといえます。同じ戦略を今治造船がとっておりますが、JMUはその中でも中~大型船に強みがあるといえます。

そのため、建造船種はバルクからタンカー、コンテナ、更には護衛艦など多岐に渡り、その規模も中型から大型船まで対応しております。なお、設備そのものが大型船建造を目的に作られたものがほとんどで、中型船建造拠点だった舞鶴は艦艇修繕に特化することが発表されるなど、今後は大型船へ完全にシフトするといえるでしょう。

くわしくは、今治とJMUの比較記事をご覧ください↓

今治造船とJMUを比較してみた
さて、今治造船とJMUとの衝撃的な提携が発表されてから、少し時間が経ちました。今回は今治とJMUの比較をしたいと思います。

建造船種絞り込み型

住友重機械工業

高付加価値船へのシフトや、百貨店のような建造船種の豊富さとは異なり、住友は建造船種をアフラマックスタンカーに絞り込みました。

住友における船舶建造は、住友重機械マリンエンジニアリングが担当しております。工場設備はVLCC建造のために作られた横須賀工場(旧、追浜工場)のみで、毎年4~5隻程度を引き渡しております。

基本はアフラということで、そのほかVLCCやケープサイズバルカーなどの建造も行ってはおります。ただし、毎年の竣工船を見るとやはりアフラに集中していることがうかがえます。

また、工場は横須賀にあるものの、艦艇事業はJMUに統合されておりますので、官公庁船には関わりありません。

三井E&S

アフラに特化する住友と異なり、三井E&Sバルクキャリアを中心に建造します。本来バルク建造の中心は中手企業群が行っているのですが、かつて大手企業であった三井は現在そのバルク市場で競争しております。

https://www.mes.co.jp/press/2019/uploads/20191218.pdf

建造拠点としては玉野と千葉に工場がありますが、千葉工場は商船を縮小していき、ガス運搬船のタンクや海洋鉄構物などを中心とする考えです。

その代わりに、中国に合弁にて造船企業を設立しております。”江蘇揚子三井造船有限公司”という会社で、2019年8月1日から操業を開始する日の浅い企業です。若干ですが以前こちらに記事にしました。

少し変わった造船所:江蘇揚子三井造船有限公司
地上建造という珍しい造船所。日中合弁企業のこの会社を少し見てみましょう!

 

玉野では護衛艦建造の実績があり、三菱の下請けとして海自のFFMを建造する予定です。護衛艦などの特殊船は玉野で、それ以外は千葉から揚子江へシフトすることとなるでしょう。

旧、中手造船業

さて、現在の造船産業において大手にとって代わったのが中手造船業です。

そもそも、大手と中手という分類は造船特有の言い回しで、現在はその分類方法が適用できなくなってます。

大手と中手の分類については、1980年に実行された第1次設備処理が大きく関係しております。

 

大手重工企業の造船はあくまでも1事業部でしかありませんでしたが、多くの中手企業は造船専業、あるいは造船事業が売り上げの過半数を占める状態にあります。

また、中手造船業の中でも比較的規模の大きい企業と小さい企業などがあり、グループを組んでいる企業群も存在します。

一概に中手といってもその内容は様々で、建造船種から工場の数、拠点の場所など多岐に渡ります。

中手企業グループ

中手造船業には2つのパターンがあります。1つは自社とそれ以外をグループ化している企業群です。自社工場とグループ傘下の企業で最適な生産分業を行い、競争力を高めるというものです。

今治造船グループ

国内最大の建造量を誇り、国内で唯一世界と戦えるのがこの今治造船グループと言えるでしょう。

桧垣一族によるファミリー企業で、「船のデパートを目指す」と話すように、艦艇や特殊船以外は何でも作れる体制にあります。詳細は依然投稿したこちらの記事に詳しいです。

今治造船とJMUを比較してみた
さて、今治造船とJMUとの衝撃的な提携が発表されてから、少し時間が経ちました。今回は今治とJMUの比較をしたいと思います。

 

今治造船グループを形成するのは、自社工場と複数の子会社です。

多くの中手企業が工場新設を考えない中、今治造船は積極的に自社工場に投資を続けてきました。そのため、自社工場として本社、西条、丸亀を設立し、そのほか多数のグループ会社を有しております。

建造の基本はバルクキャリアで、このほか世界最大級のコンテナ船やVLCCなど、まさに船のデパートを目指すという戦略に合致した行動を取っております。

ただし、建造船種の主流ははやりバルクキャリアです。小型から大型船までのすべての規模を、グループの最適な企業に生産分担させ、手掛けております。

名村造船グループ

グループ企業としては、名村造船グループの拡大も見逃せません。

名村造船所:意外と大きな造船グループ
国内建造量1位の今治造船や、2位のジャパンマリンユナイテッドと比べると、それ以外の造船企業はあまり名が知られてません。 今回紹介する名村造船は、国内のみの建造量ではトップ5に位置する老舗造船会社です

今治とは異なり、名村造船の自社工場は伊万里にしかありません。オイルショック前は大阪にある本社工場のみで、VLCC市場に参入するために新規設立したのがこの伊万里工場でした。設備処理時に本社工場を処理し、伊万里に1本化されました。なお、大阪本社工場跡地はクリエイティブセンター大阪として開放されてます。

建造船はパナマックスからケープ、更にはVLOCと中~大型船のバルクキャリアを主に建造してます。また、このほかアフラマックスタンカーも建造してます。

造船事業を行っているグループ企業は名村造船のほか、函館どつく佐世保重工業があります。

函館どっくは、本社函館造船所に新造船用船台1基と修繕用ドック3基を、室蘭製作所に船台2基とドック1基を有する企業です。ただし、総トン数5,000トン以上の船を建造できるのは本社の船台と、室蘭のドックのみです。このため、建造可能な最大船型は総トン数35,200トンで、ハンディクラスのバルクキャリアを主に建造しております。

 

一方の佐世保重工業は、舞鶴海軍工廠を引き継ぐ名門で、当時世界最大だったタンカー”日章丸”を建造したことで有名です。また、オイルショック後は一時期新来島ドックの傘下にありました。それについては下記の記事にて詳細があります。

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設備としては修繕用ドック4基と、建造用ドック1基を持つ規模で、VLCCも問題なく生産できます。やはり海軍工廠を引き継ぐだけありますね。ただし、建造船種はアフラマックスタンカーが多いです。

 

また、佐世保と函館は艦船や官公庁船の修繕も手掛けており、特に函館は東北~北海道方面にある数少ない護衛艦修繕可能なドックです。護衛艦建造はしないが、修繕をする意味で、国防上重要な拠点にほかなりません。

新来島どっくグループ

新来島どっくグループ小~中型の高付加価値船の建造を重視している企業です。各船種と船型を建造する今治や、中~大型を主として建造する名村とはこの点で大きく異なります。

新来島は自社工場としては大西工場しかありません。祖業地である波止浜をはじめ、大西工場以外は分社化を選びました。独立採算制を考えた結果だとれてます

グループのうち造船事業を行うのは6社ありますが、うち2社は修繕のみの対応で、実質4社となります。

 

DWT30万トン以上の船舶を建造可能なのは豊橋のみで、次に大西の15万トンとなります。ただし、VLCCなどの超大型船の建造を新来島は注視しておらず、あくまでの中~小型船の建造に絞っております。

新来島どっくは自動車運搬船(PCC)とケミカル・プロダクトタンカーで有名です。数値で見ると、世界で運行しているPCCの約17%(4~5隻に1隻)ケミカル・プロダクトタンカーの約13%(7~8隻に1隻)が新来島製です。

多数の規模を建造できるのではなく、あくまでも中~小型の高付加価値船に特化するのが、特徴と言えるでしょう。

尾道造船

尾道造船は船台1基とドック2基を持つ企業です。ただしドックは基本修繕がメインで、実質の商船建造は船台のみです。また、グループ傘下にある新造船建造関係の子会社として佐伯重工業コロンボドックヤードがあります。

建造船は尾道が中型プロダクトタンカーを主として建造し、佐伯にてハンディ小型のバルクキャリアを建造してます。コロンボに関しては、設備で言うと125,000重量トンまでの船舶を建造可能ですが、実績などが入手困難なため、実際のところは不明です。

尾道造船の詳しい社史はこちらからどうぞ。

 

私個人ですが、尾道造船グループとしては、新造船よりもむしろ修繕をメインにしている印象を受けます。

独立専業企業

上記のような複数の企業から成るグループのほか、中手には1社のみで活動している企業も存在します。1社のみといっても、自社工場が1つのみということではありません。複数の工場を有する企業ももちろん存在します。

大島造船所

大島造船所は別名”バルクの大島”と呼ばれており、ハンディマックス型バルクキャリアの連続生産で有名です。とにかくバルクキャリアに集中した建造を行っており、ドックで4隻同時建造するなど、単独ドックで年間40隻弱を建造できるのは、世界でも大島造船所だけといえます。

生産性の権化:大島造船所
今回紹介する大島造船所はドック1基にも関わらず単一のドックとしては国内最大の建造隻数を誇る、生産性特化の珍しい企業です。

大島造船所について詳しく知りたい方は、こちらの小史がおすすめです。

他の造船所と異なり、大島は大阪造船所(50%)と住友重機械(25%)、住友商事(25%)の共同出資により誕生しました。大阪造船所が船舶の巨大化に対応できなくなったため、新天地に出る必要性が生じて選ばれたのがこの大島の地でした。

単独ドックと記載があるように、大島造船はドック1基しかありません。しかし、年間40隻もの引き渡しを行っているのです。オイルショック後に誕生したため、創業当時からコスト削減と納期短縮が求められてました。そのため、ドック1基の中で4隻を同時に建造するという離れ業を行うなど、その生産性は間違いなく国内トップに入ることでしょう。

 

なお、三菱重工の香焼工場を引き受けるという話があります。詳しくはこちらにて。

三菱の決断?造船再編
三井E&S千葉工場の売却にはじまり、今治とJMUの資本提携、そして今回は三菱(MHI)の100万トンドックである香焼工場が売却される運びとなりました。

常石造船株式会社

常石造船は日本造船業の中では少し変わった企業です。というのも、早々に国内での建造に見切りをつけ、海外進出を図った歴史があります。ちなみに、私は大学院時代に研究していた企業の1つでもあり、インタビューにも行きました。造船研究にて詳細を書く予定です。

常石の建造船は主としてハンディマックス型のバルクキャリアです。中型船を中心にバルクキャリアのほか、プロダクトタンカーやコンテナ船を建造します。

かつては国内に本社工場のほか多度津工場がありましたが、今治造船へ移っております。このため、国内は本社工場のみとなってます。

海外工場としてはフィリピンのセブ島と、中国の舟山に拠点があります。この2つを合わせると、常石造船の船舶建造力は他のグループ企業に引けを取りません。

 

もともとは本社工場をマザー工場として新型船や高付加船を建造、それ以外のシリーズ船を海外にて建造という考えでした。現在はどちらも技術力が上がってきており、国内で建造するのと大きな差異はないそうです。

また、本社工場では建造できない規模の船舶も、海外工場では建造可能です。このため、大型船は海外で建造という流れが出来ております。

サノヤス造船株式会社

サノヤスは、売り上げの50%以上を造船事業が占めておりますが、その比率は年々低下しております。多角化を進めており、今では造船のほか陸上機器やレジャー事業のように様々な事業を抱えてます。HEPFIVEの観覧車も実はこの会社が作っていたりします。

造船事業としては水島にVLCC建造可能なドック1基のみで、主にパナマックス型バルクキャリアを建造してます。また、大阪には木津川に面した修繕ドックがあります。

ちなみに、隣接する倉敷シーサイドホテルに宿泊すると、翌日の朝に工場見学ができます(可能であればですが)。

内海造船株式会社

内海造船は今回紹介した企業では唯一の子会社組織です。親会社は日立造船で、もう造船事業は行っておりません(JMUに統合)。

本社工場ともいえる瀬戸田工場には、船台1基と修繕ドック2基を有しております。このほか、同じく日立造船子会社のニチゾウIMCを吸収合併し因島工場(船台2基)として運用しております。

内海造船は中~小型フェリーでとくに有名で、宮島を結ぶフェリーもこちらで建造されました。

建造船は中型のプロダクトミックスとしておりますが、実際のところは瀬戸田でフェリーを、因島で貨物船やタンカーなどを建造します。設備の都合上、建造可能なのは小型から中型船に限定されるため、内海としては中型船に特化した方針のもと事業を展開しております。

 

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